役に立つかもしれないはじめの一歩

鹿児島県大崎町から学ぶ、ゴミ処理の考え方

皆さんがお住まいの地域で、ゴミの分別はどのようになっていますか?
日本には市町村が1718あります*1が、それぞれの自治体でごみの分別方法は異なっています。
なぜなら、自治体によって保有している焼却炉や埋め立て地、財政状況、人口、産業などすべてが少しずつ違うからです。プラスチックを一つ例に取ってみても、熱利用されるか材料としてまた生まれ変わるか、硬質プラとそうでない物を分けるかなども異なってきます。

引越し前の自治体はプラを分けてたのに、引越し先は分けていない!なんてことはよくあること。

特に焼却炉の有無はゴミの分別方法に大きな影響を与えます。今回は記事執筆時点でリサイクル率日本一を誇る、鹿児島県大崎町に伺い生ゴミ処理の方法について紹介します。

大崎町では、草木や生ゴミを燃やすゴミにすることができません。生ゴミを堆肥化できる施設があるためです。生ゴミを堆肥化している自治体は多くありますが、今回の視察で大崎町ならではだと感じたことを主観的に見ていきます。詳しい生ゴミ堆肥化の流れは、そおリサイクルセンターのwebページをご参照ください。

大崎町ならではと思ったことは以下3つ
・おがくずで生ゴミ回収用バケツを洗う
・芋破砕機を生ゴミ粗破砕機にリメイク
・作った堆肥は破格の値段で販売

まず、大崎町では生ゴミ回収に、フタとパッキンがついた専用のバケツを使います。

町民はそのバケツの中に野菜の切りくずや貝殻、種などの生ゴミを直接入れます。この際小さいビニール袋を使わないのがポイントです。ビニールが入っていると堆肥化するときに邪魔になってしまうからです。

これだとリサイクルに手間がかかってしまいます

そして、週3回、生ゴミの回収があります。これなら夏も生ゴミの臭いに悩まされずに済みそうです。

回収された生ゴミバケツは有機工場に運ばれてます。空になったバケツは、ひっくり返しただけでは落ちてこない、生ゴミ由来の水分などが残ってしまいます。これを放置すると臭いの原因になるので、水で洗いたくなるのですが、洗った水を処理するのも大変です。そこで、おがくずの登場です。以下に生ゴミバケツの中でおがくずがどう循環するのかを図示しました。

バケツ内のおがくずの役割。左から右に時系列で並んでいます。

バケツに残った生ゴミと水分をおがくずで拭き取ります。使ったおがくずはそのままバケツに放置しても問題なく、堆肥の原料になり、消臭効果も発揮します。また、おがくずは、大崎町は牛舎の床用にたくさん生産されているため、導入が容易という背景もあります。

まさにこの土地ならではの工夫だと感じました。

次に、回収された生ゴミを粗破砕する際に用いる破砕機は元々芋用の破砕機で、リメイクされたものです。既存の産業で使っている道具の利活用をしている例です。

生ゴミ破砕機

破砕された生ゴミは草木と混ぜて堆肥化場所へ運ばれます。ここでは生ゴミの量に合わせた区画が用意されています。

堆肥化中。水分量や空気量を調整しながら、適切な発酵を行う。

適切に発酵が進むと、微生物の活動により温度が80〜90℃になり、ハエやカビ、残留種子の発芽を防ぐことができます。白く見えるのは無害な糸状菌で、これも良い発酵ができている証拠です。

堆肥化中。下から空気、上から水分を供給している。

こうして、半年弱で出来上がった堆肥は、地元の町民に積極的に使ってもらえるように格安で提供されています。余ったら、埋め立てゴミになってしまうという背景があるからです。

この肥料は一般の人から集めた生ゴミからできているため、初期の頃、使う人には抵抗感があったようです。しかし、実際に畑でこの肥料を使い作物を食べてもらうことで安心して使ってもらうことができた。というエピソードがあるようです。

大崎町の例では、1998年から始まった埋め立てゴミ減量のための取り組みが、現在の循環型社会につながっています。ゴミ減量は地域全体を巻き込む大きな課題であり、解決方法は複雑で多様なことを痛感しました。ある地域にとって持続可能な方法があったとしても、他の地域ではそのやり方を導入するだけでは上手くいかない可能性があるということです。良いとされる技術や方法を取り入れようとすることはもちろん大切ですが、大崎町のように、それぞれの自治体がもつ特徴を分析し、現状とありたい姿のギャップから解決の方針を策定していくことが重要だと感じました。

参考資料
*1: 総務省webサイト https://www.soumu.go.jp/kouiki/kouiki.html

参考文献
加藤哲郎 監修, 図解でわかる 土壌・肥料の基本とつくり方・使い方, ナツメ社, 2018年

視察協力
一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 http://www.osakini.org
有限会社そおリサイクルセンター https://www.gomizero.info/index.html
曾於南部厚生事務組合 清掃センター